自己理解の「まわり」から始めてみる ― 自分を知るための、身近な入り口 - 福岡県・熊本県の障がい者就労移行支援事業所 ティオ大牟田築町・ティオくまもと新市街

自己理解の「まわり」から始めてみる ― 自分を知るための、身近な入り口

「自分のことを考えましょう」と言われても、手が止まってしまう

「自己理解が大事だと言われるけれど、何から考えればいいのか分からない」 「自分の長所を書いてくださいと言われて、一行も書けなかった」 「自分のことなのに、自分が一番よく分からない」

就労に向けた準備の中で、自己理解は欠かせないテーマとして語られます。ただ、いきなり「自分はどんな人間か」と正面から問われても、答えに詰まってしまう方は少なくありません。それは、考える力が足りないからではなく、入り口が大きすぎるだけのことが多いのです。

今回は、自己理解そのものではなく、その「まわり」にある身近な切り口から、少しずつ自分を知っていく方法をお伝えします。

そもそも、なぜ自己理解が就労準備で大切なのか

仕事を選ぶ時も、職場で働き続ける時も、「自分はどんな環境なら力を発揮しやすいか」を知っているかどうかで、見通しは大きく変わります。自分の傾向を知っていれば、応募先を選ぶ基準ができますし、面接で自分の状況を説明する言葉も持てます。働き始めてから困りごとが出た時にも、「何が負担になっているのか」を整理しやすくなります。

つまり自己理解は、就職活動のための特別な作業というより、長く安定して働くための土台づくりです。だからこそ、完璧に仕上げようとせず、身近なところから少しずつ積み上げていくことが大切だと私たちは考えています。

入り口①:他の人から見た自分を、聞いてみる

自分のことは、自分が一番分かっているようで、実は見えにくい部分がたくさんあります。たとえば、本人は「当たり前のこと」として気にも留めていない行動が、周りの人から見ると立派な強みであることがあります。

「いつも挨拶が丁寧ですね」「作業の手順をきちんと守っていますね」「人の話を最後まで聞いてくれますね」。こうした言葉を、日々の中で受け取ったことはないでしょうか。自分では普通だと思っていることほど、他の人の目を通すと、はっきりとした特徴として見えてきます。

心理学には「ジョハリの窓」という考え方があります。自分も他人も知っている部分、自分は知らないが他人は知っている部分、といった具合に、自分の姿を四つの領域で整理するものです。この中でも、「自分は気づいていないが、周りは気づいている部分」に光を当てることが、自己理解を広げる大きな手がかりになるといわれています。

身近な人に「私の良いところって、どこだと思いますか」と尋ねるのは勇気がいりますが、「作業している時の私は、どんな感じですか」というように、少し軽い聞き方から始めてみるのも一つの方法です。

入り口②:好き・嫌いではなく「楽だった・しんどかった」で振り返る

「何が得意ですか」と聞かれると難しくても、「これまでの経験の中で、楽に続けられたことは何ですか」「しんどさを強く感じたのはどんな場面でしたか」という聞かれ方なら、答えやすいという方は多いものです。

楽に続けられたことには、その方に合った環境や作業の特徴が隠れています。しんどかった場面には、配慮や工夫が必要なポイントが隠れています。「得意・不得意」という大きな言葉ではなく、体感に近い言葉で振り返ることで、自分の傾向が少しずつ見えてきます。

たとえば、振り返りの際には次のような問いが手がかりになります。

  • 時間があっという間に過ぎた作業は、どんなものでしたか
  • 終わった後に、ぐったり疲れたのはどんな場面でしたか
  • 一人で進める作業と、誰かと進める作業では、どちらが落ち着きましたか
  • 指示が口頭の時と、文章の時では、どちらが分かりやすかったですか

どれも、正解のない問いです。思い浮かんだことを、そのまま書き出してみるだけで十分です。

 入り口③:できないことを「自分のせい」にしない

自己理解を進める中で、苦手なことや、うまくいかなかった経験と向き合う場面も出てきます。その時に大切にしていただきたいのが、「できなかったこと」を、そのまま自分の価値の低さに結びつけないということです。

たとえば、「電話対応が苦手」という事実は、「だから自分はダメだ」という意味ではありません。「電話対応では、相手の声と手元のメモを同時に処理することが負担になりやすい」というように、状況と理由を切り分けて捉えることで、必要な工夫や配慮が具体的に見えてきます。苦手を知ることは、自分を責めるためではなく、自分に合った環境を整えるための情報収集です。

「苦手」を「やり方次第で変えられる部分」と「環境で補う部分」に分けて考えられるようになると、気持ちの重さも少し軽くなっていきます。

入り口④:小さな記録を、続けてみる

自己理解は、一度の振り返りで完成するものではありません。日々の小さな記録が、後から大きな手がかりになります。

  • その日の体調や気分を、一言だけメモする
  • 集中しやすかった時間帯を、ざっくり記録する
  • 疲れを感じた場面と、その前後の出来事を書き留める

細かく書く必要はありません。一週間、二週間と積み重ねていくと、「午前中は集中しやすい」「人が多い場所に行った翌日は疲れが出やすい」といった自分なりの傾向が、少しずつ浮かび上がってきます。書けない日があっても、そこで途切れたと考えず、思い出した時に再開すれば大丈夫です。

 入り口⑤:「環境」の側から、自分を考えてみる

自分の性格や能力を直接考えるのが難しい時は、視点を変えて、「どんな環境なら過ごしやすいか」から考えてみる方法もあります。

  • 静かな場所と、少し人の気配がある場所では、どちらが集中しやすいか
  • 作業の手順が決まっているものと、自分で工夫できるものでは、どちらが安心か
  • 一日の中で、何時頃に調子が上がりやすいか

環境の条件として整理しておくと、そのまま、職場に伝える配慮事項や、求人を選ぶ際の基準にもつながっていきます。「自分はどんな人か」という大きな問いに答えなくても、「自分に合う条件」を言葉にできれば、就職活動では十分に力になります。

自己理解は「自己受容」とセットで進みます

自分を知ることと、自分を受け入れることは、切り離せない関係にあります。苦手なことを知っても、それを受け入れられなければ、ただ苦しくなってしまうこともあります。

「こういう傾向がある自分でいい」「そのうえで、どう工夫すれば働きやすくなるか」。そう考えられるようになることが、自己理解の本当の目的だと私たちは考えています。完璧に自分を理解し尽くす必要はありません。「今の時点で分かっている自分」を、少しずつ更新していければ十分です。

見つかったことは、「仮のメモ」として持っておく

ここまでの入り口で見えてきたことは、結論として固めてしまうのではなく、「今のところ、こう感じている」という仮のメモとして持っておくのがおすすめです。環境が変わったり、経験を重ねたりすれば、自分の感じ方も少しずつ変わっていくものだからです。

以前は苦手だったことが、慣れによって負担でなくなることもあれば、逆に、思いがけない場面で疲れやすさに気づくこともあります。そのたびに書き換えていける前提で、気楽に付き合っていくことが、自己理解を長く続けるコツです。

新市街での取り組み

新市街では、日々の訓練の様子や記録を通じて、スタッフが気づいた利用者の皆さんの強みや傾向を、言葉にしてお伝えするようにしています。「今日は、手順をとても丁寧に確認されていましたね」といった小さなフィードバックの積み重ねが、ご自身では気づきにくい部分に光を当てる機会になっていると感じています。

また、面談の中で、これまでの経験を「楽だった・しんどかった」という視点で一緒に振り返ることもあります。一人で考えると行き詰まってしまうことも、対話の中で言葉にしていくと、少しずつ整理されていくものです。振り返った内容は、職場実習や就職活動の場面で、ご自身の状況を説明する言葉として活かしていただけるよう、丁寧に整えていきます。

ティオくまもと新市街では様々なサービスを通じて、身体障害・知的障害・精神障害(統合失調症・発達障害・自閉症スペクトラム・てんかん・ADHD・うつ病・双極性障害(躁うつ病)・パニック障害・適応障害・社会不安障害・強迫性障害等)をお持ちの方の【働きたい!!】【就職したい!!】という夢を叶えるお手伝いをさせていただいております。
また、ティオくまもと新市街では、障害者就業・生活支援センター、障害者職業センター、ハローワーク障害者専門部局等と連携し、利用されている方の最適で最短の一般就労実現を目指して、日々支援をしております。

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